〜新たな想い〜


「ふう〜。」


聖ルドルフ学園の寮に来て間もない不二裕太は
風呂掃除を終え一番風呂に入っていた。


「すいませんね、裕太くん。
お風呂掃除の当番を代わってくれて・・・。」


観月がすまなそうな顔をして浴室に入ってきた。

「あ、いいえ。
観月さんは俺のためのメニュー作りで忙しいんですから当然です!」

「んふ、少々大変でしょうが、
あのメニューで練習を積めば間違いなく君はもっと強くなれますよ」

「はい!ありがとうございます!」

「もう、誰も君を『不二周助の弟』とは呼ばせませんよ。」

にっこりと微笑む観月に裕太は目を輝かせ

「頑張ります!」 と、答えた。



「んふ、どうです?裕太くん。
このシャンプーを使ってみませんか?ハーブの香りが最高ですよ」

「あ・・・。いえ、俺はせっけんで洗いますから。」

「おやおや、髪はきちんとシャンプーで洗わないと ぱさついてしまいますよ。」

観月はあきれた様子だ。

「でも、俺の髪なんか短いし・・・。」

「そんなこと言わずに使ってみなさい・・・。」

観月は裕太に近づいた。


(うわっ!観月さんがこんなに近くに・・・。)

裕太はドキッとした。

観月はそっとシャンプーを手に取り裕太の髪を洗い始めた。

「んふっ、髪に優しいアミノ酸を使ったシャンプーですから
裕太くんの髪にもいいですよ。」

細く長い観月の指が裕太の髪をなでるように洗う。

白魚のような指と言うのはまさにこのことを言うのかもしれない。

「観月さん・・・。 すごく気持ちいいです。」

(人に髪を洗ってもらうのがこんなにも気持ちいいなんて・・・。) 裕太は心地よかった。

「んふ、気に入ったら差し上げましょうか?
お風呂掃除を代わってくれたお礼です。」

「そんな・・・。受け取れないです」

「んふ、たくさんありますから気にしないで下さいね。」

「あ・・・はい。ありがとうございます。」



(観月さんと同じシャンプー、観月さんと同じ香り・・・。)

裕太はなんとなくうれしくなった。



『不二周助の弟』



そんな目でしか見られてなかった自分を観月さんは『俺個人』として認めてくれた・・・。

裕太にとって、観月は『存在』を初めて認めてくれた人だった。


「観月さん、俺、必ず期待に応えます!」

裕太は観月に忠誠を誓った。

「んふ、期待していますよ。
聖ルドルフの『不二裕太』の名前を全国に広めましょう!」

「はい!」



二人は湯船に入った。

「・・・僕もいろいろあってここに来たんですよ。」

「え?」

一瞬、観月の表情が曇ったような気がした。

「あ、なんでもありませんよ・・・。」
観月は少し視線をそらした。

「観月さん・・・。」

「裕太くんの辛い過去に比べれば大したことありませんよ」

観月は優しく微笑んで湯船から立ち上がった。

(うわっ)

白くなめらかな観月の身体は湯玉をはじいてキラキラと輝いた。


(すげぇ綺麗だ・・・。)

裕太はそのしなやかで美しい観月の肢体に目を奪われた。




・・・このままずっと一緒に入っていたいな・・・。


裕太は放心状態になった。

「んふ、裕太くん、身体を温めるのはいいことですが、
あんまり長時間入っているとのぼせてしまいますよ。」

観月はにっこりと微笑んで浴室を出ていった。



「観月さんて・・・兄貴より怖いかもな・・・。」

ふやけた身体を見ながら裕太はつぶやいた。


「でも、俺はあの人に付いていこう!」

先輩後輩の関係を越えた、何か新しい気持ちが裕太には芽生えていた。





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観月とお風呂、いいなあ〜。
こちらは「萌えて咲くのが華」で掲載された作品を修正したのもです。

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