〜ダイアモンド・ダスト



「さあ、皆さん。準備はいいですか?」

そう言いながら観月さんはゲレンデに現れた。


その、赤紫色の人目につく鮮やかなスキーウェアも観月さんなら何の違和感もなく感じた。


「俺と金田はスノボコースで滑ってるから何かあったら電話してくれ。」


赤澤部長と金田は違うリフトへと向かった。


「くすくす、裕太はスキーは初めてかい? 迷子にならないようにね。」


木更津さんが俺をからかう。


「裕太はあっちでソリ滑りすればいいだ〜ね」


柳沢さんまで一緒にからかってきた。


「んふっ。 僕が一緒に滑って教えてあげますよ。」


日焼け止めにゴーグルと完全防備の観月さんが近づいてきた。


「では裕太くん、初級コースから滑りましょう」


サクサクと音をたてながらストックが雪をつつく。


「んふっ。 そんなに腕に力を入れる必要ないですよ。 斜面に対して角度をつけて板の面を合わせれば転んだりしませんから。」


と、観月さんに言われたが思うように体が動かない。


「ゆっくりでいいですよ。」


観月さんはウィンクしながら言った。


今日はとても機嫌がいいみたいだ。


やはり雪国出身の観月さんにとっては スキー場は庭みたいなものなのだろう。


「さあ、次ですよ」


リフトが近づき、観月さんが手を引いてくれた。


「わぁ!」


ふわりと体が浮いた。


リフトから見るスキー場の景色は真っ白な雪でまぶしく輝いていた。


「綺麗ですね」


「都会では味わえない感激でしょう?」


「はい!」


「スキーは滑走のスピード感やスリル感を楽しむのではなく、
美しい自然と景色を体で感じながら楽しむものだと僕は思ってます。
滑っていると、風と一体になってまるで自分が雪になったように感じますよ。」


めずらしく観月さんが目を輝かせ熱く語りだした。


観月さんが楽しそうだと俺もうれしい。


「さあ、タイミングを合わせて降りますよ。」


リフトから降りるときに一瞬体がふらついたが観月さんが支えてくれた。


「大丈夫ですか?」


観月さんの髪が俺の頬に当たるほど近い。


ドキンとした。


「あ・・・大丈夫です。」


「じゃあ、僕の後についてきて下さいね」


まるで流れるような綺麗なフォームで観月さんはゆっくり滑り出した。


「そうそう、その調子です! いいですよ裕太くん。」


夢中で観月さんの描くシュプールをなぞった。


「ん〜、すばらしいです。
裕太くんは飲み込みが早いから教え甲斐ありますね」


「ありがとうございます」


「では、もう少し難しいコースにチャレンジしてみましょうか?」


「はい!」


そして俺たちは上級コースのリフトへ乗った。


「うわっ、すごい急斜面だな・・・。」


あまりにも上級コースは険しいので俺はたじろいでしまった。


「大丈夫ですか?やはりちょっと怖いみたいですね。 ならば下山しますか?」


観月さんは気遣ってくれているが、きっとこのコースをおもいっきり滑りたいに違いない。


さっきから俺に付きっきりで指導してくれたが、自由に滑る時間がなかった。


「いえ!頑張ってみます!」


観月さんはちょっとおどろいた風に俺を見て


「さすが裕太くん。 ならば付いてきなさい!」


観月さんの表情がぱっと明るくなり瞳が輝いた。


「このコース、滑りたかったんですよ! では、観月はじめ、発進!!」


「えぇ!?」


完全にキャラが変わったような観月さんに俺はあっけにとられながらも必死で付いて行った。


「うわっ、怖え・・・。」


思ったよりも斜面が険しくてスピードが出せない。


そして雪も吹雪いてきた。


急激に視界が悪くなり俺は身動きがとれずその場にうずくまった。


目の前が真っ白でわけがわからなくなってきた。


「寒い・・・。」


あっと言う間に全身が雪に埋もれてきた。


“観月さん・・・。!”


心の中で思いっきり叫んだ。


と、その瞬間目の前がバラ色になった。


「裕太くん!大丈夫ですか!?」


「!?」


それは観月さんの鮮やかなスキーウェアだった。


「天候が悪化してきましたね、戻りましょう。」


観月さんに支えられ俺はロッジまで滑ってきた。


「裕太!!」


「どこに行ってたんだよ!」


「くすくす。やっぱり迷子になったんだね。」


「泣いてるだーね?」


みんなが出迎えてくれた。


「急に吹雪いてきたら、 裕太くんがいないので心配しましたよ」


「観月さん、ご心配おかけしてすみませんでした。」


「いいえ・・・。僕が付いていながらすみませんでした。」


「観月さんのせいじゃないっすよ! 俺がいけなかったんです。」


「でも、不思議とあの吹雪のなか裕太くんの居場所がすぐにわかったんです。」


「え?」


「裕太くんが僕を呼んだような気がして、そっちを向いたら裕太くんが目の前にいたんです・・・。」


俺の心の叫びが観月さんに届いていた!?


優しく微笑む観月さんの髪に、溶けた雪がキラキラと光り、ダイアモンドのように輝いていてとても眩しかった。




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観月とスキー、行きたい!
優しく手取り足取り・・・指導してもらいたい・・・!

うは!ヨダレが!!(笑)











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