〜一心同体〜



「おい樺地、相手をしろ。」

「うす」

「行くぜ!」


氷帝テニス部のコートにポーン、と何度も音が繰り返される。


「マジマジすっげー!!跡部のヤツ!」

「とうとう完成させたんやな・・・」

「手塚戦の後から、練習してたもんな・・・」

「”跡部ゾーン”ついに完成かよ。」


樺地が打ち返す球は全て、跡部の正面に吸い込まれる ように戻って来る。


「フ・・・案外簡単じゃねえの、球の回転を利用すりゃ 誰にだって出来るじゃねえか。」


跡部は軽快なラケットさばきで部員達を魅了していた。



「あれ・・・!?」


突然、コートの中の樺地の体が鈍色に光る。


「い゛ー!!」

「!?」

跡部の表情が変わった。


「フ・・・やるじゃねえの、樺地。」


「ええ!?どうなってるんだよ、これ。」

「そうか・・・樺地のやつ、もう覚えて使ってるんや。」

「”樺地ゾーン”かよ・・・」

「すげー、このラリー、終わらねえぞ!」


”跡部ゾーン”と”樺地ゾーン”のラリーは続いていた。



「・・・そこまでだ、上がって良し!!」

榊の声で跡部と樺地は動きを止めた。


「よくやった跡部、これで氷帝はさらに強くなる。」

「いえ、監督。俺はただ樺地にコピーさせただけですよ。」

「ご苦労だった。行って良し!」


その日の部活帰り、跡部は樺地を連れて帰った。


「まったく、お前には毎回驚かされるぜ。 何日かかかって身につけた跡部ゾーンをあっさりと覚えちまうなんてよ。」


「うす。」


「これで・・・来年の氷帝学園はもっと強くなれるな・・・」


「うす・・・。」


「これで・・・俺の役目はもう終わりだ・・・。」


「・・・・・・・。」


「ま、俺が引退してからも、こうして遊びに来いよ・・・」


「うす。」


「今日は・・・お前に食わせたいものがある・・・。」


それは最高の牛丼だ。


本来は「ローストビーフヨークシャープディング添え」 の為だけに育て上げられた、跡部牧場の最高級肉牛のものなのだが、
最近の樺地はどの店にも牛丼がないらしく元気がなかった・・・。


「さあ、食え、樺地。」

「うす。」


「うまいか?樺地。」

「うす。」

「味、薄いのか?」

「・・・いえ。」

「そうか、よかった。けんちん汁も飲め、樺地。」

「うす。」


「お代わりもたくさんあるぞ、樺地。」

「うす。」



牛丼をうまそうにかきこんで食べる樺地を見て跡部はうれしくなった。



幼い頃から両親と離れ、兄弟もいない跡部にとっては
樺地は肉親に近い想いを抱いていた。


あまり言葉を交わさなくても、気持ちがどんどん伝わってくる相手・・・。




世の中にそんな人間と出会える確率なんて高くないだろう。



また、樺地にとっても跡部は兄以上に信頼できる存在だ。



お互いの気持ちが・・・すぐに伝わってくる・・・。



この人と・・・出会えてよかった・・・。



「樺地・・・」



跡部は樺地の側に寄ってきた。



そして、果てしなく大きく感じる樺地の背中に身を寄せる。



樺地の体温が伝わってくる・・・安らぎを覚える温かさだ。



「・・・なぁ、樺地。泊まっていけよ・・・。」




「・・・うす。」





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何を隠そう、初めて書いた作品がこれ(笑)
この二人の純粋な関係が大好き!

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