〜恋のブレ球2〜






「ねえ金田、ちょっと相手してよ。」




今日も男子テニス部で練習をしていた瑞紀は同じクラスの金田に相手を頼んだ。




「え!?やだよ、お前の球重いから。裕太に頼めよ〜。」



金田は勘弁してくれと言った様子で瑞紀に言った。




「裕太は観月さんと新技の練習をしてるから忙しいんだよ〜、
だから金田を誘ってるんじゃんかぁ」




瑞紀は金田に頼み込んだ。



「くすくす・・・。瑞紀ちゃん、僕が相手をしようか?」

木更津が声をかけてきた。




「淳は俺と新しいフォーメーションの練習をすることになってるだーね。」



柳沢が木更津に声をかける。



「残念・・・。瑞紀ちゃんまた今度ね。」




「はい。」


瑞紀はどうしようかなという表情で金田を見つめた。




「う〜ん、じゃいいよ。」

金田は渋々コートに入る。




「金田、行くよ!!」



瑞紀の長身から繰り出されるサーブは金田のラケットをはじいた。




「うわっ、痛ぇ〜!相変わらずばか力だな、お前。」

金田はラケットを拾いに行った。



「なんだ金田、女子のサーブもリターンできないのかよ、それに“ばか”って言うなよ!」


瑞紀はドキンとした。




あの試合の日以来、部長の赤澤に対して体が反応する様になっていた。




「部長・・・。」

瑞紀は赤澤を見上げた。相変わらず大きいな、と思った。





「俺が相手をする、打って来いよ。」




「はい!!よろしくお願いします!」



瑞紀のサーブは赤澤にあっさりとリターンエースをとられてしまった。





「確かにお前のサーブは重いな。でも取れない球じゃないな。」





さすが部長だな、と瑞紀は思った。





「なあ瑞紀。俺のブレ球受けてみるか?少しきついと思うけどよ。」




「はい!お願いします!」

滅多にないチャンスに瑞紀はワクワクした。




「行くぞ!」


ビシッと赤澤のラケットからショットが打たれる。


「あれ!?」



瑞紀は軽く打ち返せた。





「・・・すいません、赤澤部長。球が一つしか見えませんでした。」


「な!?なんだと!?」


赤澤は驚いて瑞紀を見た。





「んふっ。ブレ球は動体視力が優れていない人には
ただのショットにしか見えないんですよ。」




観月の説明で赤澤も瑞紀もそうなのか、と納得した。






〜そしてその日の部活の帰り〜




「瑞紀!一緒に帰ろうぜ。」



と赤澤から声をかけられた。




「はい!」




瑞紀は赤澤のとなりに並んで歩き、その身長差が嬉しかった。




「腹減らないか!?なんか食って行こうぜ。
あ、ここうまいんだよ!」



と、赤澤に誘われ松屋に入った。




「俺は牛皿とカレーの大盛りにするか。お前は何にする?」

「私はカレ牛にします。」


瑞紀が財布を出そうとすると




「いいよ、おごってやるよ。」



と瑞紀の背中越しに赤澤は五百円玉を入れた。





その瞬間、瑞紀はドキンッと心臓が強く鼓動した。


(うわっ、なんか部長がこんなに近くに・・・。)




瑞紀は食券を渡され赤澤のとなりに座った。




「わ、おいしい!」




「な?ここのカレーうまいだろ?俺よく来るんだよ、この牛皿も、まいうー!」


「あはははっ」





勢いよく食べる赤澤の姿が普段ちょっと近寄りがたいイメージと違い、親近感が芽生える。




「ごちそうさまでした。」


「おう、気をつけて帰れよ。家まで送ってやれなくてごめんな。」




「あ、いいですよ、じゃ、また・・・。」

店を出て瑞紀は赤澤と別れた。




「あ、そうだ、本屋へ行かなくちゃ!」



瑞紀は駅前の本屋へ立ち寄り目当ての本の他に雑誌や小説などを立ち読みしていた。





「そろそろ帰ろうかな・・・。」




瑞紀が書店を出ようとした時に衝撃が走った。


目の前の通りに赤澤が女性と楽しそうに話しながら歩いていたのだ。



「赤澤部長・・・。」





瑞紀はショックだった。



髪の長い色白の綺麗な女性だった。




この世のどんな男性をも虜にしてしまいそうな清楚で可憐な人だった。





「彼女いたんだ・・・。」




瑞紀は落胆し家へ帰った。







次の日、重い気持ちのまま瑞紀は部活に出ていた。





”昨日のことは忘れよう、”




そう思いつつも赤澤を目で追ってしまう。





部活が終わり早々に家路へ急ごうとした瑞紀だが、足取りが重い。


「おい、待てよ。」





すると後ろから赤澤が追いかけてきた。





「あ、あのよ、俺、今日誕生日なんだけどよ、
お前一緒にいてお祝いとかしてくれねぇか?」




ちょっと照れた感じで赤澤が言う。





瑞紀は飛び上がるほど嬉しかったが昨日のことが頭から離れない。





「私じゃなくて、他に祝ってほしい人がいるんじゃないですか?」




瑞紀はこんなひねくれた返事しかできない自分が嫌になる。


「は?どういう意味だよ?」




「私、昨日見たんです。部長が彼女と歩いているところを!」





もうだめだ、







そんな絶望感で瑞紀はいっぱいになる。





「あ〜、あの人か。なんだ、お前見てたのかよ?」




瑞紀はうなづいた。





「すげぇ綺麗な人だろ?あんな美人が兄貴のカノジョなんだぜ!」




「え!?お兄さんの彼女?」




「なに?お前勘違いしたのかよ?
昨日あの後兄貴も一緒になって三人で俺の誕生日プレゼント買いに行ったんだよ。」





赤澤からすべての事情を聞いた瑞紀はホッとしたのと同時に




「・・・よかった。」




と、涙がポロポロとこぼれだした。





「わっ!、なんだよ??お前!!
もしかして今日の部活のとき変だと思ったけど、
そんなことずっと気にしてたのかよ!?」




「え!?」




「俺、今日ずっとお前のこと心配してたんだぞ、
そんな、俺なんかのことで・・・泣くなよ。」





赤澤は瑞紀を強く抱きしめた。







「お前って、ほんと、かわいい奴だよな。でも俺、すっげー嬉しい!」





「部長・・・。」







赤澤の体温と鼓動が瑞紀に伝わってくる。




ずっとこうしていたい・・・。





「よし、じゃ、お祝いしようぜ!なんでも食いたいもの食わせてやるよ!
あ、それにほしいものも買ってやるよ!」




「ぷっ・・・。今日は部長の誕生日じゃないですか!
私がおごる方ですよ。」




「え!?あ、そうか。そうだったな、
はははははっ!ま、いいよ、今日は最高の誕生日になったから!
じゃ、行こうぜ!」





赤澤は瑞紀の手をつなぎ歩きだした。






やっと手に入れた本物の恋。





〜この手はずっと離さない。〜




と瑞紀は思った。




***************

前作に続き、赤澤の恋のブレ球により、瑞紀はどんどんひかれて行きます(笑)
世の中には、こんなへタレなカップルもたくさんいるんじゃないでしょうか!?(笑)
でも、こんな青春っぽい感じの恋したかったなあ〜。


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