〜真実のシナリオ


「いいぞ裕太! もうライジングリターンは完璧です。その調子ですよ。」

テニススクールのコートでは観月の指導で裕太はどんどん上達していった。

観月がたまに


「裕太」

と呼び捨てで呼んでくれるようになったことが裕太にはとても嬉しかった。



「俺は絶対に兄貴を越える!!」

大きくラケットを振り下ろし裕太はツイストスピンショットを打った。

「裕太くん、だめじゃないですか!」

観月は困った顔をする。

「あっ!すみません観月さん。」

裕太は気まずそうに言った。

「ツイストスピンショットはまだ骨格も出来ていない裕太くんには負担がかかりすぎますよ。
こんなことならまだ教えない方がよかったですね・・・。」

「すみません観月さん、これからは気をつけます!」

「わかってくれればいいんです。」

観月はにっこりと笑った。

「でも俺・・・。いつか兄貴と戦いたいんです、
もっともっと強くならないと兄貴は本気で俺を相手にしてくれない・・・。」

裕太は辛そうな顔になった。



観月はしばらく考えていたが

「・・・。
一つだけ、不二周助の本気で戦う姿を見られる方法があります。」

と、ため息混じりに言った。

「え!?」 裕太は顔をあげた。

「ただし・・・
それには今度の青学戦でキミには越前リョーマに対して
ツイストスピンショットを使ってもらいます。」

「え!?使ってもいいんですか?」

「八回までですよ、
それ以上打ったら腕を痛めてしまいますからね。」

「はい!」

「後は僕の指示通りにして下さいね。」







そして、都大会当日を迎えた。

すべては観月のシナリオ通りに進んでいた。


「んふっ、裕太くんのツイストスピンショットのことを知ってお兄さんは相当怒ってますね。
僕に対して本気で戦ってきますよ。この試合、よく見ておくんですよ。」

不二周助との試合前に観月は裕太に言った。

「すみません、観月さん。」

「いいんですよ、悪役には慣れてますから。」

ニッコリと微笑みながら観月はコートへ向かった。





そして、試合が終わった。

「弟が・・・世話になったね。」



ひざまづく観月の前で兄の周助が言葉を放つと裕太は震えが止まらなかった。

「わざとだな、あいつ・・・ひでぇことするな・・・。」

部長の赤澤がつぶやいた。



「観月さん!!」

裕太は観月の側に駆け寄った。

「すみませんね。僕ではまだ不二くんの真の力は見せられなかったようです・・・。」

観月は目を伏せた。

「ごめんなさい!観月さん。
俺の為にこんな公衆の面前で大恥かかせることになってしまって・・・。」

裕太はギュッと拳を握りしめた。

「それに、あんな・・・陰湿なやり方を兄貴がするなんて・・・
観月さんは全然悪くないのに・・・。
俺、本当になんて言ってお詫びしたらいいか・・・。」

裕太は唇を噛んだ。

「裕太くんのせいじゃありませんよ。気にしないで下さい。」

裕太を気遣い観月は優しく微笑んだ。



「観月さん!!」

抑えられない感情を腕に込め、裕太は思い切り観月を抱きしめた。

「俺・・・、もう・・・。」

裕太の頬を涙が伝う。



言いたいことはたくさんあるのに、のどに詰まったように言葉が出てこない。

観月に対する自分の気持ちに気づいてしまっただけで・・・。



“好きです”

の言葉の代わりにどんどん涙が溢れてくる。

「・・・。」

「観月さん・・・俺・・・。」

もう、それ以上の言葉が出てこない。

「裕太・・・。」

観月はそっと裕太の髪をなでる。



胸が・・・苦しい。



「僕なんかのために泣かないで下さいよ。」

その言葉がより一層裕太の涙を溢れさせる。

「裕太・・・。 もっともっと強くなるんですよ。いつかは兄貴を越えて下さいね。」

裕太の髪をなでながら観月が言った。



「はい!必ず兄貴を越えて見せます!」

裕太は力強く言った。


「観月さん、俺、本当にルドルフに入ってよかったです!」

「やっと裕太くんらしくなりましたね。
では早速また新しい練習メニューを作りますね。」

「はい!ありがとうございます。
じゃ、俺ずっと観月さんの風呂掃除を代わってやりますから!」

「すいませんね。」

「いいんですよ、じゃ、俺ちょっと兄貴に今日は家に戻らないって伝えてきます!」



勢いよく走ってゆく裕太を見ながら

「んふっ・・・。すべてシナリオ通りです。」


と観月は笑った。



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ええ!?そうだったの!?

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