「俺、英語はからっきしダメで、
1から教えてもらわないとお手上げなんっすよ。」


裕太はすまなそうに言った。


「んふっ、英語は僕の得意科目ですから完璧に教えてあげましょう。」


観月はにこやかに笑った。


そういえば観月は英語、フランス語、スペイン語など語学が堪能だ。


「観月さんは何でそんなに外国語が話せるようになったんですか?」


何気なく裕太が質問をすると観月は少し顔を曇らせた。




「・・・僕の実家は山形でも有名な果実農家でね・・・。
ワインやジャムや缶詰に使いたいといって海外からもたくさんの業者が買い付けに来るんです。
・・・なので家には毎日外国人が来ていました。」


「あぁっ!それで外国語が話せるようになったんですか!」


裕太はなるほどと言った表情でポンと手をたたいた。




「・・・でも、僕が応対に出るとどの国の人も“かわいいお嬢さんですね”って言うんだ・・・。」


観月はため息をついた。



「はぁ・・・。」


「それである時、
父はふざけて僕に姉のお下がりのワンピースを着せて応対させたんだ・・・。」


「えぇ!?」


「そうしたら、フランス人の客が
“ワイン用のブドウすべてと、このおいしそうなマドモアゼルも売ってくれ”と、言い出して・・・。」


「はぁ?」


「父は僕を売ろうとしたんだ。」




観月はしくしくと泣き出した。


「そ、そんな!観月さん、泣かないで下さいよ〜!」


裕太は慌てた。


「裕太くん、僕はそんな辛いことがあってここに逃げて来たんです。」


「観月さん・・・。」


「裕太くんは幸せですよ、僕に比べれば・・・。」


「・・・そうですね。」


「恵まれてる裕太くんなら、頑張ればきっとよい結果が出せますよ。」


「・・・はい!
観月さん、俺、頑張ります!!」


裕太は目を輝かせた。


「ありがとうございます!」


裕太は晴れやかな表情で部屋を出ていった。





「んふっ、シナリオ通りです。 これで裕太は一人で頑張れます。」


観月は数学の参考書を取り出した。


「僕は人に勉強を教えてあげるほどお人好しじゃないですよ、自分の勉強で手いっぱいです。
うまく裕太を追い払えたし、これで落ち着いて勉強できますよ。」





こうして裕太は観月のシナリオ通りにうまく乗せられてしまったのだった。







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なんたって観月は受験生ですからね。。。
人をあてにせず、テストは自力で頑張るしかないですな。









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